君は人間が好きかい?嫌いかい?

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後期Ⅱ部 企画・脚本クラス 第8回
講師:中島貞夫監督

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いよいよ最後となった授業では、この二ヶ月をかけて我々が書いてきた脚本を中島貞夫監督が講評されていくわけです。それはもう緊張します。中島監督が目の前にいます。向い合って講評されるわけですから、逃げ場はないわけです。監督は私の方を見て「人物を具体的に描け」と繰り返し言います。「人物の情念を描くことが大事」だと言います。

今までに何度も何度も「脚本は葛藤を描くものだ」と教えられて耳にたこが出来ましたが、中島監督は「葛藤」という言葉は用いずに「人物の感情/行動を具体的に(ビビッドに)描け」という表現で、「葛藤」という意味をより正確に表現します。脚本に大事なことは、「人間の(説明不可能な)感情/行動から産まれる心の揺れ動きを描く」ことだと言うのです。

中島監督は「君は全く人間を描こうとしていないねえ、君は人間が好きかい?嫌いかい?」と私に訊きます。そんなこと言われても言葉に窮します。そう言われると確かに私には筋書きを描こうとした記憶はあっても、人間を描こうとした記憶はありません。不意打ちをクラッタような気分です。そして有無をいわさずに言います。「君、脚本というのはドラマだよ。ストーリーの説明じゃあダメだよ」。あまりにも当然の指摘を受けてしまいました。中島監督はあきれ顔で出来の悪い脚本と生徒を、それでも真摯に講評します。ひとつひとつの言葉に対して、何かとてつもなく説得力を感じたのも無理は無いでしょう。「映画はエモーションだ!」という言葉が脳裏に浮かんできて、私はいよいよ納得してしまいました。

中島監督は、はっきりきっぱり正確に、活発な思考と語りで、問題を要領よく本質から指摘します。

その活力溢れる思考の一端に触れられただけでも、非常に刺激的な体験になりました。もちろんそれ以上に脚本を講評されること自体が貴重な体験として、私にとって非常に勉強になったことは言うまでもありません。

 

シネマカレッジ京都 2013 後期Ⅱ部
企画・脚本クラス
阿部 竜樹