脚本基礎クラス受講レポート(14-3期)

脚本基礎クラスを受講した方の中から、本講座のレポートを書いていただきました。
脚本を学ぶこと、書くことのリアルを丁寧に表現してくださっています。ありがとうございます。
これから受講をご検討されている方は、ぜひ“先輩”の体験談を参考にしてみてください。

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「書くことを再認識」

私は1期(2013年4月〜8月)で安田先生の講義を一度受けたのですが、今回、楠本先生の講義を受けて、大変有意義なものを得ることができました。

と言うのも、「アウトライン」「プロット」「ハコ書き」といった、今まで我流でやってきてモヤモヤとしていたものが、回を重ねて、「こういうものですよ!」とハッキリと認識できたからです。

文字通り順を追ってシナリオ完成まで持って行くプロセスが、非常に分かりやすかった。また、それによって、「なるほど!こうすれば話を作ることができて、スッキリと登場人物がテーマに沿って動いてくれる!」ということが、二回目にしてストンと腑に落ちたように感じました。

また、実際の映画を例に、面白い脚本作りの基礎を分かりやすく学ぶことができました。「トリッキーなものを目指さず、素直に「三幕構成」に沿って書けばよろしい」と、過去に書いた作品を振り返ると、確かに当てはまることばかりでした。
少数精鋭で、回を追うごとに課題は苦しくなっていったものの、それにもまして楠本先生の熱いコメントが書かれた朱ペンに愛を感じ、また応えたいと頑張ることができました。

「シナリオはこう書くものだ。しんどいけど、これさえやっておけば後々楽だ」というセオリー、「自分の脚本を自分で演じてみろ」という実践が学べて、得られたことは大きかったです。

一人で書くのは孤独です。自分一人の世界だけでしか脚本を見ることができなくなってしまう。でも、「こうしてみれば」という提案や、「それはないわ」という批評をくださった志摩プロデューサーと事務局田中さん、最後の本ウチで、自分の作品でもないのに、有意義なコメントを下さった他の生徒さん、役者目線で脚本のイメージを立ち上げてくださった俳優のお二人、本当にありがとうございました。

これからまだまだ改稿して、中島監督に「今年はイイ出来ですぜ」と提出できる作品を作ろうと思います。そして、中級クラスで、一皮むけた自分をお見せできるように、頑張ります。

北村 紗代子

今回、私は初めて脚本を書くことに挑戦させていただきましたが、受講するに当たって不安はありました。

私は小さい頃から長文を書くのが苦手で読書感想文200字書くことすら苦労していたので、全10回で脚本を書き上げることができるのか分かりませんでした。

初回の授業で先生から課題の締め切りが厳しいよと言われ、さらに不安が募りましたが、結果的に20枚もの脚本を書き上げることができ自分でも驚いています(笑)。

これはたまたまなのですが、同い年の受講生が同期に2人いたというのも自分にとっては励みになりました。
授業後、駅の改札付近で2,30分くらい立ち話をしながら反省会をしたこともありました(笑)

●今後の目標
やりたいことがたくさんあるのですが、1つは地元・京都をテーマとした脚本を書くことです。
また落語や歌舞伎が好きなので、そういう脚本を書けたらいいなと色々と妄想しています。

先生・スタッフの皆さま、ご指導いただきありがとうございました。

仲野 克哉

「創作と人生」

楠本先生ご講義の柱である「主人公がどのように成長していくか、その行動変化を描くのが脚本」「主人公の行動目標の設定がキーポイント」のシンプルさに、深く同感しました。そして、このシンプルな法則は人生そのものにも当てはまることに気がつき、自分の歩んできた「シンプルなことが(も)出来ていない」人生を深く反省する、という おまけが付きました。しかし、シナリオ作りの基礎は分かって形あるものを作っていくことの苦しさと言ったら、七転八倒と言ってよいほどです。

▶企画段階:楠本先生の仰った通り、ここは楽しいです。時代や場所、何となくおもしろくて華のありそうな登場人物を5パターンくらい夢想するのに、何の苦労もありません。後で考えると、この段階で既に発想が貧弱なのですが。

▶アウトライン段階:企画の中で、ものになりそうなものに絞り物語の粗筋を考えますが、早くも自分は一体どんな物語を作りたいのか、と迷路に入ります。悲劇か喜劇か。恋愛モノか家族モノか。現代劇か時代劇か。主人公は男か女か。迷った挙句、今 自分にはこれといって書きたいテーマはない事に気づきます。特に食べたいものがないのと同じ。知的ハングリーさに欠ける人生を送ってきた自分に気が付きます。

いや、自己弁護も兼ねて申し開きをすると、私にも人生の悩みはあるし、それはドラマの主題にもなり得ます。しかし、今はそれを特にドラマ化、シナリオ化したいとは思わないのです。自分の経験や感情をぐいぐいと言葉、科白にしていく覚悟や気力がない、と言いますか。創作活動をするためには、ハングリーさ、覚悟、気力が要ると思います。
従って、私は自分の感情や人生からは離れた、他人の人生に材を探してしまいました。そちらの方が楽だから。
しかし、他人事から物語を生み出すためには「是が非でも書きたいテーマ」を日頃から求め、温めておくべきだと思います。
私は、自分でも全然 感動しそうもない、しかし一応話のつじつまの合うアウトラインを作りました。

▶企画書・プロット段階:ここから難度がぐんと上がります。企画書(らしきもの)を書いてみると、我ながらその詰まらなさに嫌になります。せめて「おや?」と気を引くユニークさが欲しいのですが、斬新な発想が湧いてきません。
では、企画書は後回しにして、ともかく論理緻密な物語のプロットを作ろうと思っても、進むべき方向が決まっていないだけに迷走します。また、第3者から「なぜ主人公はそう考えるのか?」「主人公のその時の心理状態は?」と突っ込まれて聞かれると、それに答えるに必要な、主人公の人格の確立が出来ていないと分かります。楠本先生が仰った「先ず、主人公はどんな人間か、徹底的に細部を考えておくこと」の必要性が痛感されます。

▶ハコ書き:何とか登場人物の輪郭とプロットらしきものは出来ました。ここからは、楠本先生が仰る「頭の中でカメラを回せ」にすがり、主人公ら登場人物が頭の中で自然に動き出し、物語を紡いでいってくれることを期待しました。確かに映像のイメージらしきものは頭の中にぼんやりと浮かびますが、主人公が、他の登場人物が、自ら立ち上がって歩きだす気配はありません。こちらで無理にでも動かすほかなさそうです。
途中で、次のシーンをどう展開すれば良いのか分からなくなってしまいました。しかし、アウトラインの段階に戻り、一から作り直す時間もありません。

▶シナリオ書き:30分ものでも400字30枚の結構な分量となります。我ながら発想がおかしいですが、これだけの分量を生み出すにはどうしたら、と悩み、登場人物にとにかく語らせることにしました。そうすると、登場人物たちの言葉だけはどんどん紡ぎ出されるのです。しかし「主人公の行動変化」という主軸にはつながらない無駄な言葉の羅列とも言えます。楠本先生の仰る「ストーリーが先に進まない」状態です。
時間もなくなり、脇役たちに長尺の背景説明をさせてストーリーを強引につなぎ合わせるだけで終わりました。これでもシナリオと言えるなら、しかしこれでドラマを撮りたいと思う人は私を含めて皆無でしょう。全然おもしろくないから。

やはりドラマは観客である人間のために、人間の営みを見せるものである以上、人間以外のもの、宇宙や自然や動植物からは始まりません。その人間像が確立していないのだから、環境や歴史背景等をいくらいじっても、少なくともおもしろいものにはなりません。

がっくりした自分を励まし次作に挑むために、これから私は主人公探しの旅に出ます。出会う人、TVに出ている人、新聞記事に出ている人、あるいは小説の登場人物。これは、と思う人物に出会えたら、あるいは私の頭の中にそういう人をしっかりイメージできたら、私は再びキーボードに向かいシナリオ作りを始めるでしょう。

そして実は、私は私自身の「しょーもない」人生を描きたいのです。他人事の取材や想像をする必要もなく、「わたくしネタ」はたくさん持っているから。しかし、それだけの覚悟や気力を備えることができるかな?

タケル