脚本が1番の演技者(企画開発クラス第1回レポート)

シネマカレッジ京都2013後期
企画開発クラス 第1回
講師:谷口正晃監督

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『父のこころ』を作る際、北海道~沖縄まで100通以上の脚本の応募があったのに、監督の心の琴線に触れるものが1本もなかったということに驚いた。

脚本を書く前に「何を」描くのかということと、監督や脚本家が半年かけて、映画を作り上げるための「キーワード(種)」・「異物」・「イメージ」を一つ一つ固めていく。(『父のこころ』の場合、各々「家族」「骨壷を持った父親」「早春スケッチブック」)。

その作業が脚本の最も大切な「葛藤」につながっていく。そして、それらを浮き上がらせるために、カードを使って登場人物の背景を時に変更し、時に削り落とし、映画の中のマップを作り・・・という実際の映画立ち上げのリアルなプロセスの話が興味深かった。

もうひとつ、私が監督の言葉の中で一番心に残ったのが、「脚本が1番の演技者」というもの。セリフが活きていないと人物が成り立たないのは当然だが、逆に具体的な人物にあててセリフを書くと自然に人物が動きやすいことを学んだ。

良い脚本家とは、言葉にならないものを書く人のこと。

そのために個人(自分)の根元を突きつめて普遍性を持たせることができる人のこと。

ルーティーンにならず、常に挑戦する姿勢である人のこと。

谷口監督は、『時をかける少女』~『シグナル』とはまた違う姿勢を、『父のこころ』で得ようとしている。それが最初の「100通落選」になった理由だと思った。

さあ、ここまで来たら、負けられない。私も日々ネタ探しと新しいシナリオ制作にいそしもう。

シネマカレッジ京都2013後期企画開発クラス
北村 紗代子