物語のキーと、それを体現化するアイディア(企画開発クラス第一回レポート)

シネマカレッジ京都2013後期
企画開発クラス 第1回
講師:谷口正晃監督

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谷口正晃監督が授業に来るにあたって僕は「谷口監督に何を聞くにしても、僕たち企画開発クラスの映画企画作りに活かすことができるものでなくてはならない」と考えていました。

「谷口正晃監督が次回の授業(一週間後)に来る」と聞いたその日に谷口監督の作品をTSUTAYA で借り、『時をかける少女』『乱反射』『スノーフレーク』『シグナル ~月曜日のルカ〜』と発表順に確認。
作品一つ一つに400文字ほどの短い批評を書き、自分の考えをまとめ、谷口監督が何を重要視しているのかを探ぐりました。
その後に、事前に頂いていた新作の『父のこころ』の初期のプロットと完成した脚本を読み、その違いを箇条書きにして一枚の紙に纏めました。

これが僕が1週間でおこなった準備です。

谷口監督作品を観て気づいたことは、すべての作品の主人公(もしくは話のキーになる人物)が「過去に囚われている」という点でした。
過去に囚われ今を生きづらく感じている登場人物が、過去に向き合い成長していく、それが谷口監督作品に共通する点でした。
この点は新作の『父のこころ』の脚本を読み、引き継がれていると感じたので、谷口監督はその部分を重視していると仮説をたてました。(谷口監督は脚本を兼任しているわけではないので、監督の直接の作家性ではないとも言えますが…)

「“遺骨を抱えた父親”というアイディアを聞いたとき、これは映画になると思った。」
(『父のこころ』は、家族を捨てた父親が9年ぶりに骨壷を持って家族のもとに帰ってくるというところから始まる)

谷口監督が授業の中で、こう言われたときに仮説が立証されたと感じました。
「遺骨を抱えた父親」という「過去に囚われた人物」を体現化するアイディアが生まれたとき、『父のこころ』という映画は産声をあげたのです。
『乱反射』なら「自分の世界で完結している短歌」、『シグナル』なら「映画館にひきこもる少女」が「過去に囚われた人物」を体現化するアイディアにあたるのでしょう。

ここから僕は「企画開発クラスが映画の企画を作るにあたってはじめに見つけるべきは、「過去に囚われた人物」のような物語のキーと、それを体現化するアイディアである。」という考えに行き着きました。
以上のように自分なりにですが答えを見つけることができました。
谷口監督、学ぶことが多い楽しい授業をありがとうございました。

シネマカレッジ京都2013後期 企画開発クラス
浅山 幹也